生石灰と消石灰
実験1:発熱反応用の生石灰を作り、発熱反応を確かめよう。(セメントのでき方)
石灰水なんて、水酸化カルシウムの溶液の上澄みだろ!と言えるならそれでよいです。それが手に入らないとしたら、どうします?そこで今回は、身近なものから、生石灰と消石灰を作ります。
材料:卵の殻またはチョーク(最近は炭酸カルシウムではないものもある)、マッフル、加熱器具
炭酸カルシウム(卵の殻かチョークを使います。石灰岩は加熱に大変労力がかかります。)を砕いてマッフルで強熱します。マッフル内は900度近くになります。15分ほど加熱したら生石灰CaOになります。マッフルがない時はこんろで下から風を送り強熱します。かなり苦労します。この時に大量の二酸化炭素が発生します。生石灰があれば何の苦労もありませんけどね。CaCO3→CaO+CO2 加熱した時の炭酸カルシウムから生石灰になる反応です。多量の熱が必要になります。
CaO+H2O→Ca(OH)2 生石灰から消石灰になる反応です。この時に発熱します。
強熱後、すり鉢ですりつぶしてください。水を少量加えると、70℃位に発熱して水酸化カルシウムに変化します。
CaO + H2O → Ca(OH)2 これで石灰水の原料の水酸化カルシウムの出来上がりです。これを水に溶かして、上澄みを石灰水として使用してください。息を吹き込みますと白濁します。この水酸化カルシウムと膨らし粉を加熱してできた炭酸ナトリウムを水溶液にして混合すれば水酸化ナトリウムが生成できます。濃度はあまり濃くありませんが、アルカリとしての利用はできます。水酸化ナトリウムの製法は食塩の電気分解のページもご覧ください。
セメント使用時のCO2削減について
セメントはこの化学反応をします。炭酸カルシウムから生石灰、砂・砂利・水を加えて水酸化カルシウム最終的には珪酸カルシウムという物質になるそうです。しかし、CaCO3 → CaO + CO2 の反応を起こす際に多量のCO2を排出します。地球温暖化の原因です。そこで、このCO2を液化し、セメントにする際に注入することで炭酸カルシウムをセメント内に作ります。そうすると強度が増してセメントの使用量が減り、CO2の排出が減るという技術があります。詳しくは以下のリンクからどうぞ、アイザワコンクリートいう会社です。
さらにこれに炭酸ナトリウム(重曹を加熱したもの)を加えてろ過すれば水酸化ナトリウムを作れます。
Ca(CO)2+Na2CO3→NaOH+CaCO3 これで、使えるアルカリとしては 石灰水、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムとなり十分と思いませんか? 他の炭酸カルシウムでも試してみてください。
コンクリートが崩落する理由(中央高速のトンネル事故、記憶にありますか?)コンクリート内の水酸化カルシウムが空気中の二酸化炭素を吸収します。 Ca(OH)2+CO2 → CaCO3 + H2O そうすると、炭酸カルシウムに変化し、水が発生します。周囲からだんだん変化しこの変化が、中心にある鉄筋にまで達すると、鉄が 錆びて、崩れる原因になります。
せっかくなので発熱反応と吸熱反応をのせておきます。
実験2:おいしい吸熱反応(実験No.834)
正確には途中で発熱反応も入るので、問題ありですが、おいしいのでのせます。
材料:重曹、クエン酸、グラニュー糖、水
重曹とクエン酸を2:1の割合で混ぜます。そこに水をできるだけ少なく加えて型抜きします。入浴剤の完成です。
ビーカーに水を入れて入浴剤を入れると、クエン酸と重曹が反応して二酸化炭素を発生します。この時、周囲の温度を水の温度が下がります。
C5H8O7 + 3NaHCO3 → Na3C6H5O7 + 3H2CO3 となりますがこの時は発熱します。その後すぐに以下の反応が起こります。
H2CO3 → H2O + CO2 この時に周囲の温度を吸収します。左の写真では10℃程温度が下がりました。
さてと、ここからが本番です。ラムネ菓子を食べた時に感じるさわやかさは、二酸化炭素の発泡とその際に起こる吸熱反応です。そこに甘みを加えることでおいしさを感じます。
重曹とクエン酸を小さじ1/4ずつ入れて、そこにグラニュー糖を大さじ1入れます。最小限の水でかき混ぜて型抜きします。ラムネ菓子の完成です。これさせ食べれば、教科書で扱う塩化アンモニウムに水酸化ナトリウムの吸熱反応と合わせて実験すれば、生徒は決して吸熱反応を忘れないでしょう。
実験3:カイロを作ろう
材料:鉄粉10g、木炭(活性炭の方がよい)1g、濃い食塩水2ml程度、キッチンペーパー、ビニール袋
鉄粉と活性炭をよく混ぜ合わせて、食塩水をたらします。キッチンペーパーに包みビニール袋にいれます。手でもみ、反応が起こりやすくします。温度が上昇し始めます。量にもよるのですが、うまくいくと70~80℃程度に発熱します。
実験は簡単ですが、反応でできる物質は酸化鉄ではなく水酸化第二鉄です。ですから、中学校では反応式には触れない方がよいと思います。食塩は触媒としての役割を果たします。
4Fe +3O2+6H2O→4Fe(OH)3
実験4:尿素を溶かして温度変化を調べよう
材料:尿素20g、水20ml、温度計、ビーカー
尿素20gと水を20ml用意する。ビーカーに尿素を入れ、その後水を加える。温度がどんどん下がる。短時間で下げたいときには、ガラス棒でかき混ぜて、尿素をどんどん溶かす。20℃近く温度が下がる。尿素は溶解するときに約15KJ/molの熱を吸収する。ホームセンターで園芸用の肥料として売られているので、処分も簡単である。
1モル約60gの尿素が溶解する時に15kJの吸熱反応をおこなう。合計40gの尿素と水を約29℃程度下げることができる。実際には完全に溶けるわけではないし、20℃程度温度が下がる。この他にも食塩や硝酸カリウムなど、溶ける時に吸熱反応をするものが沢山ある。
溶解熱の発熱・吸熱について
化学変化には発熱反応と吸熱反応の2種類があります。燃焼などのように反応が継続するものは必ず発熱します。これは発熱することで次の反応を引き起こすためです。溶解熱は少し事情が変わります。物質は水中で水分子に取り囲まれます。これを水和といい、この時の発熱を水和熱といいます。硫酸や水酸化ナトリウムを薄めるとき(水に硫酸を入れて薄めてくださいね)に発熱がします。一方、水中でバラバラになる時には格子熱といい、周りから熱を吸収します。ですから、溶解熱は水和熱と格子熱の大きさによって発熱したり吸熱したりします。尿素や食塩、硝酸アンモニウムなど格子熱の方が水和熱より大きい物質は全体として吸熱反応になります。