化学変化と熱の実験4連発:発熱反応と吸熱反応
化学反応と温度変化の実験を紹介します。発熱と吸熱反応を2つずつ紹介します。
実験1:おいしい吸熱反応(実験No.834)
正確には途中で発熱反応も入るので、問題ありですが、おいしいのでのせます。
材料:重曹、クエン酸、グラニュー糖、水
重曹とクエン酸を2:1の割合で混ぜます。そこに水をできるだけ少なく加えて型抜きします。入浴剤の完成です。
ビーカーに水を入れて入浴剤を入れると、クエン酸と重曹が反応して二酸化炭素を発生します。この時、周囲の温度を水の温度が下がります。
C5H8O7 + 3NaHCO3 → Na3C6H5O7 + 3H2CO3 となりますがこの時は発熱します。その後すぐに以下の反応が起こります。
H2CO3 → H2O + CO2 この時に周囲の温度を吸収します。左の写真では10℃程温度が下がりました。
さてと、ここからが本番です。ラムネ菓子を食べた時に感じるさわやかさは、二酸化炭素の発泡とその際に起こる吸熱反応です。そこに甘みを加えることでおいしさを感じます。
重曹とクエン酸を小さじ1/4ずつ入れて、そこにグラニュー糖を大さじ1入れます。最小限の水でかき混ぜて型抜きします。ラムネ菓子の完成です。これさせ食べれば、教科書で扱う塩化アンモニウムに水酸化ナトリウムの吸熱反応と合わせて実験すれば、生徒は決して吸熱反応を忘れないでしょう。
実験2:発熱反応用の生石灰を作り、発熱反応を確かめよう。(セメントのでき方)
材料:卵の殻またはチョーク(最近は炭酸カルシウムではないものもある)、マッフル、加熱器具
炭酸カルシウム(卵の殻かチョークを使います。石灰岩は加熱に大変労力がかかります。)を砕いてマッフルで強熱します。15分ほど加熱したら生石灰CaOになります。マッフルがない時はこんろで下から風を送り強熱します。エチオピアでは苦労しました。この時に大量の二酸化炭素が発生します。生石灰があれば何の苦労もありませんけどね。
CaCO3→CaO+CO2 加熱した時の炭酸カルシウムから生石灰になる反応です。ものすごい熱が必要になります。
この生石灰CaOは水と接触すると消石灰(水酸化カルシウム)Ca(OH)2になります。この化学変化の時に熱を大量に出します。お酒やお弁当を温めたり一時期流行しましたが、現在は見かけません。薬品の取り扱いと処理が問題ですね。
CaO+H2O→Ca(OH)2
水和物(水分子を含む物質)から無水物(固体中に結晶水が無い物質)に変化させる時は加熱が必要になります。逆に無水物から水和物にする時には発熱します。石膏やセメントに水を加えるとかなりの熱が出ます。間違っても石膏に手を入れたまま固めようとしないで下さいね。
セメントも、この化学反応をします。炭酸カルシウムから生石灰、砂・砂利・水を加えて水酸化カルシウム最終的には珪酸カルシウムという物質になるそうです。しかし、セメントを作る際に多量のCO2を排出します。地球温暖化の原因です。そこで、このCO2を液化し、セメントにする際に注入することで炭酸カルシウムをセメント内に作ります。そうすると強度が増してセメントの使用量が減り、CO2の排出が減るという技術を利用している会社があります。詳しくは以下のリンクからどうぞ、アイザワコンクリートいう会社です。
実験3:カイロを作ろう
材料:鉄粉10g、木炭(活性炭の方がよい)1g、濃い食塩水2ml程度、キッチンペーパー、ビニール袋
鉄粉と活性炭をよく混ぜ合わせて、食塩水をたらします。キッチンペーパーに包みビニール袋にいれます。手でもみ、反応が起こりやすくします。温度が上昇し始めます。量にもよるのですが、うまくいくと70~80℃程度に発熱します。
実験は簡単ですが、反応でできる物質は酸化鉄ではなく水酸化第二鉄です。ですから、中学校では反応式には触れない方がよいと思います。食塩は触媒としての役割を果たします。
4Fe +3O2+6H2O→4Fe(OH)3
実験4:尿素を溶かして温度変化を調べよう
材料:尿素20g、水20ml、温度計、ビーカー
尿素は水に溶けるときに吸熱反応をし、温度が著しく下がります。よくある冷却パックに尿素と水が使われており、尿素が水に溶ける時の融解熱を利用して、周囲の温度を下げます。尿素以外には、硝酸アンモニウムが使われます。
尿素20gと水を20ml用意します。ビーカーに尿素を入れ、その後水を加える。温度がどんどん下がります。短時間で下げたいときには、ガラス棒でかき混ぜて、尿素をどんどん溶かします。20℃近く温度が下がります。尿素は溶解するときに約15KJ/molの熱を吸収します。ホームセンターで園芸用の肥料として売られているので、処分も簡単です。
1モル約60gの尿素が溶解する時に15kJの吸熱反応をおこなうので、合計40gの尿素と水を約29℃程度下げることができます。実際には完全に溶けるわけではないし、20℃程度温度が下がる。この他にも食塩や硝酸カリウムなど、溶ける時に吸熱反応をするものが沢山あります。
溶解熱の発熱・吸熱について
化学変化には発熱反応と吸熱反応の2種類があります。燃焼などのように反応が継続するものは必ず発熱します。これは発熱することで次の反応を引き起こすためです。溶解熱は少し事情が変わります。物質は水中で水分子に取り囲まれます。これを水和といい、この時の発熱を水和熱といいます。硫酸や水酸化ナトリウムを薄めるとき(水に硫酸を入れて薄めてくださいね)に発熱がします。一方、水中でバラバラになる時には格子熱といい、周りから熱を吸収します。ですから、溶解熱は水和熱と格子熱の大きさによって発熱したり吸熱したりします。尿素や食塩、硝酸アンモニウムなど格子熱の方が水和熱より大きい物質は全体として吸熱反応になります。
このページでは科学変化と温度変化についてまとめましたが、良ければ状態変化と温度変化のページもご覧ください