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化学変化と還元の実験6連発:水素・エタノール・ビタミンC・アルミ・ブドウ糖による還元  

今回は還元についてお話します。大昔から金属を扱えることはその文明の尺度になっています。金属を扱う以前の石器時代、銅をを精錬するようになり、銅に錫を混ぜて作られた青銅器、そして鉄器時代、さらに現代はレアアースへと変化しています。さて金属はそのものがそのまま地中からでてくることはめったになく、酸化物の形で出てくることが多いです。酸化物から、その酸素を取り去ることを還元といいます。中学校では一般的に酸化銅を炭素で還元していますが、今回はいろいろな還元反応を紹介します。

実験1:水素による酸化銅の還元
​ 水素をためた試験管を立てておきます。銅線をコイル状にして加熱します。黒い酸化銅になります。これを熱いうちに水素の入った試験管内に入れると、銅は還元されて、元の銅に戻ります。熱いうちに出してしまうとまた空気によって酸化銅になってしまいます。CuO + H2 → Cu + H2O と非常にきれいな反応式です。生徒実験ですと水素の扱いがネックですね。

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実験2:エタノールによる酸化銅の還元
 酸化銅を用意します。(銅粉を加熱して用意してください。)アルミホイルのお皿に乗せます。これは試験管と銅粉がくっつかないようにする為です。脱脂綿にエタノールをしみこませます。試験管に入れ両方を交互にアルコールランプで加熱します。酸化銅が還元されて銅粉に戻ります。試験管の底でこすると金属光沢が見られます。

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化学反応式は CuO  +  C2H5OH(エタノール)  → Cu   +  CH3CHO(アセトアルデヒド)  +  H2O  という反応をしますが、生徒にはエタノール中の水素が酸化銅を還元して銅になる。という説明でよいと思います。また、メタノールでもできます。反応式はCuO  +  CH3OH(メタノール)  → Cu   +  HCHO(ホルムアルデヒド)  +  H2O となります。アセトアルデヒドとホルムアルデヒドはどちらも体によくありません。少量または演示が良いと思います。このほか、ナフタレンなどの芳香族のものでもできます。

中学校では還元イコール酸素を物質からとる反応で必ず酸化とペアになっている。とここまでですが、高校になると、電子のやり取りで酸化還元を扱います。酸化:電子を失う。還元:電子を受け取る。となります。

実験3:ヨウ素のビタミンCによる還元(身近なものを使った酸化還元反応)

 ヨウ素は溶液中でI2の形で存在しています。ビタミンCによって還元されます。この場合は電子を受け取りI‐のイオンになります(還元される)。ヨウ素液にレモン入り果汁を滴下すると、透明になります。

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この実験ではヨウ素はI2で存在していたものが、ビタミンによってHI(ヨウ化水素)という物質に還元されます。さらに、I2の減少で溶液中のI3-という物質が減少するために透明になります。。反応式は C6H8O6 + I2 → C6H6O6 + 2H+ + 2I-となります。ヨウ素が電子をもらい還元されてイオンとなります。でも酸化還元というと理科の苦手な生徒には呪文のように聞こえます。現実味を持たせるためにも次の実験はどうでしょうか。

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​実験3-2 還元の導入実験(食べ物の酸化)

切ったリンゴをそのままにしておくと色が変わります。生徒に何と反応しているかと問えば酸素という答えが必ず返ってくると思います。これはリンゴのポリフェノールが酸化されるからです。食べ物も酸化するということです。

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​食品は酸化させない工夫をいろいろしています。ラベルを見ると酸化防止剤としてビタミンC(アスコルビン酸)が記載されています。酸化還元反応が身近なところで使われていることを知れば生徒も実感がわきます。リンゴもレモン汁を塗るとレモン中のビタミンCがリンゴのポリフェノールの代わりに酸化されて酸化防止剤として働きます。塩水はポリフェノールの周りにナトリウムイオンの壁を作り酸素と接触させなくして酸化防止します。食品以外にも化粧品などにも使われています。一日に一回は酸化防止剤のお世話になっていそうですね。*ポリフェノールも酸化防止剤の一つです。構造が変化することでリンゴの色が変わってしまいます。

実験4:テルミット反応
金属アルミニウムで酸化した金属を還元する方法です。ものすごいエネルギーを発しますので注意して行ってください。

まず左の写真のように金属酸化物とアルミニウムの粉末を混ぜ、反応しやすいようにマグネシウムリボンを中央に立てます。そこに点火すると激しい還元反応がおこります。金属を取り出せます。化学反応式は 2Al+Fe2O3 →Al2O3 + 2Fe となります。

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簡単にできるので、写真のように鉄道などの線路を屋外で溶接する時にこの反応を使います。詳しくは下のリンクよりご覧ください。また、アルミニウムはいったん酸化を始めるとものすごい熱を発生します。必要な酸素も酸化物から奪うので反応が終わるまで止めることができません。この性質を利用して焼夷弾としても使われています。

​実験5:ブドウ糖(還元糖)によるメチレンブルーの還元(実験832)

​材料:ブドウ糖4g、水酸化ナトリウム2g、メチレンブルー少々、水200ml、ペットボトル

​水酸化ナトリウムを完全に溶かし、そこにブドウ糖を入れます。メチレンブルーを加えると溶液は青色になります。暫くすると、ブドウ糖によって還元されて透明な液体になります。ですからブドウ糖は還元糖といわれます。振ると今度は空気中の酸素によって酸化されてまた青色に変化します。何回か繰り返し実験できます。試薬の調整は実験の直前にするようにして下さい。

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​実験6:ブドウ糖(還元糖)による還元②(実験832)

​材料:ブドウ糖4g、水酸化ナトリウム2g、インジゴカーミン1%4ml、水200ml、ペットボトル

​実験5と同じように水酸化ナトリウムを完全に溶かしてから、ブドウ糖を加えます。インジゴカーミン液を入れると緑色になります。20分程たつと黄色になります。軽く振ると空気中の酸素によって酸化され、赤茶色になります。さらに振ると、また酸化され緑色になります。この後ブドウ糖により還元されて赤茶色→黄色と変化して落ち着きます。この実験も何回かできます。ただし振り方はあまり激しく振らないようにして下さい。試薬の調整は実験の直前にするようにして下さい。

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​還元と間違えやすい実験(10円玉をきれいにする実験)

よく自由研究で10円玉の汚れをお酢やマヨネーズで落とす実験があります。汚れ自体は酸化銅です。十円玉がきれいになるので還元と間違えることがあります。これは酸化銅の被膜が酸によって溶ける反応で還元ではありません。お酢などには酢酸CH3COOHが含まれていますので、CuO+2CH3COOH→Cu(CH3COO)2+H2Oとなります。酢酸銅Cu(CH3COO)2は水溶性のため十円玉の表面はきれいになります。このように酸化物の汚れは酸で落とすことができます。またたんぱく質の汚れはアルカリによって加水分解されて落ちますので、生徒にまとめさせる時に酸とアルカリの方向でまとめさせる方が良いと思います。

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