実験912 作用反作用の法則(帆掛け船に扇風機をのせれば前進する?)
作用反作用の実験は時々間違えて扱われることがあります。帆掛け船に扇風機をのせたらどうなるかについても勘違いして、作用反作用が釣り合って動かないと説明するものを見かけます。どこが問題なのか、ご覧ください。途中の計算式は高校の物理Ⅲでおこなうものですから、気にせずに飛ばして読んでください。
実験1:帆掛け船に扇風機を乗せたら前進する?
材料:PSなど軽い船、小型モーター、プロペラ、電池、帆
PSなどでできたの船にプロペラを取り付けます。プロペラを動かすと船はどうなりますか。
扇風機が質量mkgの空気を速さvm/sで押し出したとします。船の質量をM㎏として考えます。
船の運動量の変化M・V-M・0=F ・⊿t となり空気の運動量の変化 m・0-m・v=F・⊿tとなり、2つの式から M・V=-m・vで、V = - (m/M)vとなります。
受ける力の大きさは F = Mα = MdV/dt = - mdv/dt となります。この反作用によって船は右に進みます。これはロケットが空を飛ぶ場合とほぼ同じです。これは納得しやすいですね。
帆掛け船に扇風機が乗っている場合を考えます。結論から言いますと、帆の大きさ次第ですが、船は前進可能です。よろしければ、下の欄より動画を見てください。
真ん中の図のように扇風機が受ける反作用(青矢印)と、帆が風によって受ける力(青矢印)が船にかかる力です。今度は帆が受ける力を考えます。空気が帆にぶつかり反対向きに戻ってくるとします。実際には全てが戻るわけではないし、戻る方向も正反対ではありませんが計算を簡略化します。例によって運動量の変化は
船の運動量の変化 M・V-M・0=F ・⊿t 空気の運動量の変化 m・v-(-m・v)=F・⊿t 2つの式からM・V=2m・vそしてV=(2m/M)vとなります。
受ける力の大きさは F = Mα = MdV/dt = 2mdv/dt となります。先ほどの扇風機の反作用よりも最大で2倍の大きさまでなります。これから扇風機が受ける反作用を引いた力が、船にかかる力になります。実際には帆の大きさ、角度等で変わります。船は左に前進することもできるし、静止や右に行くこともできます。前進する様子はぜひ下のリンクより動画をご覧ください。
実はこの原理を使って、ジェット機は着陸をしています。逆噴射というやつです。エンジンから噴出したガスを反射板に当てて、斜め45度の方向に出します。この反作用で着陸距離を短くしています。 またこの逆噴射を使って飛行機はバックすることも可能です。 https://www.hikouki-pilot.com/ より
作用反作用で間違えやすいポイント
下の図のように机の上にリンゴがあります。リンゴに働く重力の反作用を図示しなさい。
こんな問題があると、つい机からの垂直抗力を書きたくなりますが、正解はリンゴから地球に働く引力が正解です。釣り合いの力と混同が原因です。
次の文章の間違いを正しなさい。
AとBの力士が対戦し、AがBを押し出した。しかし、作用反作用の法則では、AがBを押す力と、BがAを押す力は互いに等しいはずである。従って、AとBは動かないはずである。
この文章は、結論の「従って、AとBは動かないはずである。」のこの部分だけが間違いです。作用反作用の力は別々の物体に働く力であるので、合成はできない。ここが重要になります。ここを勘違いして作用反作用の力が釣り合うと考えてしまうと間違えます。結論は「しかし、BはAによって加えられた力で押し出された。」