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​プラスチックの実験② PSの溶剤とPEの熱分解によるリサイクル

プラスチックによる環境問題への取り組みが問題になっています。もともと丈夫で長持ちがプラスチックの性質ですからなかなか自然界で分解されません。生分解性プラスチックは高価ですが、少しづつ使われ始めています。今回はリサイクルについて扱います。

​実験1:PS(ポリスチレン)の溶剤によるリサイクル

​材料:アセトン、ビーカー、発泡スチロールの棒

PSポリスチレンでできた発泡スチロールは、アセトンなどの有機溶剤に、驚く程よく溶けます。紙コップで見えなくすれば、さながらマジックショーです。アセトン内で発泡スチロールは気体を発生しながら溶けていきます。これは製造するときに体積を大きく発泡するためにブタンなどを入れて作るためです。

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​溶けた発泡スチロールを割りばしなどで取り、お湯につけると、中のアセトンが発砲します。アセトンで発泡したのでは使えませんが、このようにしてリサイクルが可能です。

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​実験2:PE(ポリエチレン)の熱分解による油化

​材料:ポリエチレン(ペットボトルのキャップ))、しっかり密閉できる加熱器具、ガラス管、ビーカー

​原理は非常に簡単で、PEを加熱し約400℃になるとぶんかいされます。パラフィンと軽油の主成分であるオクタンになります。

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​道具をそろえます。密閉でき熱に強いカレー粉の缶を使います。ペットボトルのフタを刻んで缶に入れ加熱します。ガラス管と缶のつなぎ目は石こうにしました。

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水をためたビーカーで気体を戻します。パラフィンの成分も抽出されているので、固まりになります。もし軽油成分のみを集めるなら、缶にゼオライト(水槽に入れる石)を入れるとパラフィンを吸収してくれます。

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​ここで問題になるのは、やはりコストです。プラスチックをわざわざ過熱して、軽油に戻すのですからエネルギーとしてはマイナスになります。しかし、プラスチックを処理することを考えに入れて、国から補助金をもらう形でやっています。

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なぜ、このように簡単に熱分解されるのかというと、構造式を見てください。どちらも炭化水素の化合物でよく似た構造です。ポリエチレンが、適当なところで切れれば、オクタンになるわけです。

​リサイクルの現状

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​発泡スチロールは大量に消費されます。この実験のように薬剤を使わずに、熱で体積を小さくしています。写真は市場での処理の様子です。(株)パナケミカルという会社で月に7000トン処理しています・

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​パラオにてPEの油化実験が進められていました。費用をJICAが補助して株式会社ブレストがおこなっていました。現在はおこなっていないようです。採算がどうしてもネックになっています。

日本のプラスチックのリサイクルの現状ですが、公式には86%(2019年)となっています。何かすごくいいじゃないかとも思いますが、実際にはプラスチックは油と相性が良く汚れが付きやすくなります。汚れたものをリサイクルするのは難しく、色々な種類の混ざったプラスチック(PE,PET,PS...など)もリサイクルは難しくなります。同じ種類のプラスチックはある程度リサイクル可能です。その点ペットボトル(PET)は一種類だけで収集されるのでリサイクルが容易です。最近は再びペットボトルにすることもできています。その他の収集したプラスチックの多くは燃やされるか、埋め立てに使うか、輸出されます。燃やしたものは、熱を利用するということでサーマルリサイクルに含めています。ですから本当のリサイクルは20%に満たない現状です。また、輸出したプラスチックはリサイクルではなく、輸出品に含まれています。中国が輸入を禁止したために現在は東南アジアに輸出しています。また、2015年までに全世界で生産されたプラスチックは83億トンそのうちリサイクルされたものは5億トン、埋め立て・焼却されたものが57億トン、25億トンが製品として使用中です。恐ろしい数字と思いませんか!?ぜひ生分解性プラスチックのページもご覧ください。

​また、日本はプラスチックの焼却技術も世界一です。特に溶融炉を使い1300~1700℃の高温でゴミを6%の量に減量する技術があります。ダイオキシンも出さずに最終的に溶融スラグになり、道路や建築資材と利用可能です。プラスチック処理の方向はこれだと思いますけどね。

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